深堀研究

<対象者> 弁理士、知財担当者

 

Q:顧客(又は自社の開発部門)から、現在開発中の新製品Aが他社の日本特許Xを侵害するかどうかの見解(特許侵害鑑定)を求められました。その際の留意点を教えてください。

 

A:特許侵害鑑定を行う際の留意点を場面ごとに下記します。 特に、鑑定前の事前確認と鑑定後のフォローが重要です。

 

1.鑑定前

 好ましくない例は、関連情報の事前確認や調査を行うことなく、単に新製品Aの技術的情報と日本特許Xの情報のみで判断することです。

 事前確認すべき関連情報としては、日本特許Xの情報(権利状況、特許権者など)だけでなく、例えば、対応する外国特許の存在やその審査状況などの確認も必要です。例えば、日本特許Xの対応米国特許Yでは先行文献により日本特許Xより権利範囲が減縮されている場合もあります。

 さらに重要な留意点は、新製品Aの開発計画や事業計画、該当する市場と特許権者及び自社のポジションなどをできるだけ詳細に確認することです。

 

2.鑑定の際

 好ましくない例は、顧客や開発部門に忖度してしまい、ネガティブ(特許侵害する)な見解を出さないことです。鑑定の主なポイントは、技術的範囲に属するか否か、特許に無効理由が存在するか否かですが、たとえ顧客らに不利な見解になったとしても、客観的な判断を行うことが極めて重要です。

 これは、鑑定を依頼する側にも注意が必要で、例えば依頼者側の知財担当者の社内鑑定結果を弁理士に伝えてしまうと、それに影響されてしまう恐れもあります。

 

3.鑑定の後

 好ましくない例は、ネガティブ(特許侵害する)な見解となった場合、それに対する対策を提案しないこと、さらに鑑定後のフォローを行なわないことです。

 判断結果が特許侵害という見解になっても、顧客や開発部門にとっては安易な開発中止や大幅な設計変更は難しいでしょう。よって、例えば以下のような対策をあわせて提案すべきです。

 ・特許Xの有効性(特許無効理由の存在)の確認

 ・特許Xの技術的範囲に入らないようのするための設計変更提案

 ・特許ライセンス受諾交渉の可能性

 ・自社特許の確認とクロスライセンスの可能性

 

 

以上

(記:谷川 正芳)